フィンランドと聞くと何を思い浮かべますか?寒い国?ムーミン?サンタクロース?オーロラ?それとも極夜や白夜?私たちはフィンランドを知っているようで、実はあまりよく知らないのかもしれません。そんなフィンランドが野心旺盛な起業家の宝庫だと聞いたら、信じられますか?寒い国、フィンランドに東北や北海道のイメージを重ねても、シリコンバレーのイメージは湧きませんよね。今回はそんなフィンランドの起業家精神にスポットを当てました。フィンランドに対するイメージが変わるかもしれません。
主な内容
フィンランドで広がる起業の波
国が乗り出す新たな産業の創出
フィンランドのうねりは世界にも広がる
◇◇◇◇◇◇◇
■フィンランドで広がる起業の波
ヘルシンキを首都に置く北欧フィンランドの人口は約533万人、日本の4%、わずか1/25ほどです。国土は日本よりやや小さめの33.8万㎦、比較的こじんまりした国のようです。
豊かな自然に恵まれる反面、天然資源に乏しいフィンランドでは、エネルギー資源の多くを輸入に依存し、少子高齢化も進む中、社会福祉の財源確保など、日本にも似た事情を抱えています。
しかし、この国が日本と大きく異なるのは、起業家を多く輩出しているという点です。
フィンランド人の国民性を表現する時に「シス(sisu)」という言葉があります。みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?「元気」 「根気」 「勇気」 「士気」 などに出てくる精神的なエネルギーのようなもので、フィンランド人の忍耐力や意志の強さ、決断力を表現しているとも言えます。
また、サウナ文化も同胞的な結束力を生み出し、また、裸の付き合いで語られる本音がビジネスにも活かされている、と見る向きもあります。
しかし、この北欧の小国、ファイランドで多くの起業家が生まれるのには、こうした国民性や精神性、文化によるものだけではないようです。どうやら他にも理由がありそうです。それは、国が積極的に起業を後押ししている、という見方です。この国か抱える課題を解決するためには、起業を促進することが必要だった、ということです。
■国が乗り出す新たな産業の創出
そもそもフィンランドにはこれと言った際立った産業がなく、失業率も高く、少子高齢化が進む中、国の財源をどう賄うかが大きな課題でした。
そこで政府が乗り出したのが、起業を支援する様々な取り組みです。産業がないのなら、産業を創出しようという発想です。そして、産業創出には新たなビジネスを立ち上げるアントレプレナーたちの存在が不可欠です。こうした国を挙げての取り組みが、Start Upやこれに関連したネットワークやプラットフォーム作りを促進し、活性化していると言えます。
また、2008年に始まった起業支援イベント「SLUSH(スラッシュ)」は、今では欧州最大規模の起業家の祭典までに成長し、新たなビジネスチャンスを求める起業家や投資家らが、世界約100カ国からこの地に集結します。
学生たちの起業育成にも力を入れています。起業が盛んになるということは、産業を生み出し、雇用も生み出します。この国に集まるお金も増えます。政府の税収も増え、財源も確保できる、そんな好循環を生み出します。そのためには若い起業家を育てることが急務だからです。
フィンランドには「シス(sisu)」という言葉があるように、この国の国民は何か目的を持った時に、そこに向かって大きな力を発揮するのかもしれません。起業はスキルやノウハウ、ハウツーよりも、そもそも精神性が問われるものでもあります。意欲と野心に満ちた、成功に飢えたエネルギーが絶対条件です。
■フィンランドのうねりは世界にも広がる
国を挙げての取り組みは、安全な投資として多くの投資マネーを引き寄せます。同時に意欲と野心に満ちた起業家も魅了します。
この歯車が絡み合っている上では、今後も多くの起業家がこの国で生まれることは間違いありません。
試行錯誤や課題を乗り越えながら、今もなお、この国では起業が増えています。今のところは成功しているようです。中国や韓国も、この国の成功に注目していると言われています。大きな国土と人口を持つ中国の世界制覇の野望は大きと言えます。共産党一党の社会主義国中国の自由経済政策はある意味不気味であり、巨大な国力を背景に世界に広がっています。また、国土が狭く内需だけでは経済の発展にも限界がある韓国もまた、新しい産業を創出し、自国、そして世界へと拡大していくことが経済発展には不可欠です。財閥経済以外にも、新たな経済基盤が必要とされています。
日本でもスタートアップのネットワークやプラットフォームが各種存在します。フィンランドの動きや他の国のプラットフォームとも連動するネットワークもあります。すでに起業を支える様々な仕組みが存在します。しかし、それだけではまだ不十分です。もう少し、国が積極的に乗り出してもいいのではないでしょうか?
いずれ今ある日本の多くの産業はレガシー化していきます。その前に国がすべきことはたくさんあります。
Comments