ビルゲイツと言えば、あのマイクロソフトの共同創設者として有名です。総資産9兆6800億円とも言われ、同社の経営を退いた後も、慈善活動家、技術者、プログラマ、作家、教育者として多方面で活躍しています。自らマイクロソフトを大国を世界に築いたゲイツ氏は、楽観主義者としても知られていますが、そのゲイツ氏が巨大化する今のテクノロジーの力に警鐘を鳴らしています。彼が描くテクノロジーの脅威とは一体どんなものなのでしょうか?
主な内容
ゲイツ氏が鳴らすテクノロジーへの警鐘
巨大化する力は政府が監視するべき
人類の「未体験ゾーン」
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■ゲイツ氏が鳴らすテクノロジーへの警鐘
2017年現在、ビル・ゲイツ氏の総資産は9兆6800億円とも言われ、4年連続で世界一となっています。
ゲイツ氏と言えば、世界にマイクロソフト大国を築いた、あの米国マイクロソフト社の共同創設者であり、ビジネスの手腕は誰もが認めるところです。しかし、その一方で、マイクロソフト社がソフトウェア産業を不当に独占しているとされ、常に政府から監視され、国や企業からの多くの訴訟を抱える身でもありました。政府の野望は、巨大化するマイクロソフト大国を解体すること、とも言われていました。そんな中、経営の舵取りをしていたわけですから、きっとゲイツ氏にも相当なフラストレーションが溜まっていたはずです。そんないくつもの困難を乗り越えられたのも、持ち前の楽観主義があったからこそ、とも言われています。
しかし、そんなゲイツ氏が、今、巨大化するテクノロジーの影響力と、それを制御できないIT企業家や政府に危機感を募らせている、と言われています。楽観主義者のゲイツ氏が描くテクノロジーの脅威とは一体どんなものなのか、今回はそんなテクノロジーの一面を覗いてみます。
■フェイクが現実を動かす
その昔、肥大化するテレビなどマスコミの影響力は、ある種の暴力とも言われ、多くの非難を受けてきました。今でも問題は残るものの、報道や放送に関する規制やルール、業界での自主規制にもより、報道の権利や言論の自由と人権の狭間で、なんとか均衡を保っています。
しかし、インターネットの登場で、個人がメディアを持つことになり、その均衡が崩れ去り、また、数々の新しいテクノジーがどんどん生み出されることで、今、その力を制御できるものがなくなった、とゲイツ氏は考えているようです。
2016年のアメリカ大統領選では、ソーシャルメディアを中心とするフェイクニュースが問題視されるようになりました。嘘がまるで事実のように広まるSNSで、それをコントロールする力は個人に任されるという現実は、むしろ無力とも言えます。
今、インターネットやソーシャルメディアでは様々なフェイクが蔓延しています。フェイクポルノも社会問題になっています。フェイクは人が創り出すものですが、AI技術の誕生により、テクノロジーが簡単にフェイクを作り上げ、世界に配信することができるとも言われています。社会がフェイクにより動かされ、政府や権力が誤った決断をする、ということも起きかねません。ゲイツ氏は、すでにその現実が始まっている、と言っています。
■巨大化する力は政府が監視するべき
今、アメリカでは、小さな存在が、わずか10数年のうちに、世界に影響を与える巨大テクノロジー企業に成長することが、当たりまえのように起きています。Facebookも、Google(Alphabet)も、Amazonもみんなそうです。金融マネーをはるかに超える巨大時価総額企業に膨れ上がっています。
それらの企業は、「人々の生活を、世界をもっと便利に、快適に、楽しくする」と言いながら、どんどんその影響力を拡大しています。しかし、彼らのテクノロジーの力を制御するものはありません。彼ら自身が制御するか、権力が制御するしかありません。ゲイツ氏は企業自らが制御できない力は「適切な調査」の下、政府が監視し制御するべきとも言っています。
自らが政府の監視を受け、政府の圧力と闘ってきたゲイツ氏の真意は何なのでしょうか?あまりにも巨大化するテクノロジーの力に対する警鐘なのでしょうか?
■人類の「未体験ゾーン」
さらにゲイツ氏は語っています。
「テクノロジーは、大きな企業だけでなく、小さな『組織』にも、人々に多大な被害を及ぼす力を与えてしまっているのではないか?」と考えているようです。
「もし、小さな『組織』が核兵器や、バイオテロ、サイバー兵器にアクセスできるようになったら、何百万人、何千万人、何億人、何十億人が被害を受けます」。そんなことはあってはならないことですが、現実問題として、今、それが起きてしまったら、私たちにはそれを止める術がありません。AIの技術を手に入れてたテクノロジーは、ますます進化を続けています。世界の電源をシャットアウトしない限り、今もこの瞬間も力を増しているのです。大きな企業でも、小さな『組織』でも、それを悪用する者がいないとは限りません。
「私を怖がらせるのはその問題です・・・」。自らがテクノロジー企業のトップとして、世界をけん引してきた実力者の言葉だけに、その重みを感じます。
進化は常に2つの側面を持ちます。一つは私たちの生活をより便利に、快適に、楽しくするプラスの一面です。しかし、もう一方は、それを悪用する者や支配する者による私たちへの脅威という、闇の側面です。人類は、これまでもこの2つの側面のバランスを取りながら進化を続けてきました。しかし、進化があまりにも急速に、そして巨大になった今、私たちはこれまで人類がかつて経験したことのない、「未体験ゾーン」に足を踏み入れているのかもしれません。
あなたはゲイツ氏が感じる脅威をどう思いますか?
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