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執筆者の写真松本 啓嗣

起業小国日本。7割が起業したくない、日本の国民性と構造。


あなたは起業したいと思いますか?マーケの得ダネの読者には既に起業しいる方も多くいるので、この質問にはあまりピンとこない人もいるかもしれません。実は、日本は先進国の中でも起業率が低い国です。就労人口に占めるサラリーマン(経営者や役員を除く給与所得者)の割合は83%。まさにサラリーマン大国です。今回は「起業したくない」日本の実態について覗いてみます。


主な内容

  • 7割が“起業したくない

  • 若者の企業意識も低い

  • 日本は起業しづらい国?

  • 安定志向が高い国民

◇◇◇◇◇◇◇

■7割が“起業したくない

中小企業庁の中小企業白書によると、日本の起業率は先進国で最も低い国の一つで、4~5%程度。これはアメリカやイギリスと比べても半分ほどで、国民の起業マインドの低さを表しています。

ランドスタッドが行った意識調査では、起業したいかと思うかの質問に、「起業したくない」と答える割は約7割(69.9%)あり、世界平均の53.1%と比較しても高いという結果が出ています。調査対象は33の国と地域、その中でも最も高い数字です。

  • 起業したくない

日本:69.9%

グローバル平均:53.1%

日本には、中小、大企業を含め、多くの雇用が存在しています。少子高齢化が進む中、企業側も雇用の確保に躍起になっています。働きたくても働けない環境にはないので、サラリーマン人口が増えるのは当然と言えば当然です。もし、仕事を選ばなければ、就労人口全員分の雇用が既にあり、むしろ余ってしまうとも言われています。人手が足りないということは、雇用する側と雇用を探す側のギャップでしかありません。

一方、経済成長目まぐるしい中国に目を転じると、起業者は1億2000慢人も及び、日本の人口とほぼ同じです。いくら人口が多い中国と言っても、この多さは驚きです。人口比で見ても9%、かなり比率も高いと言えます。(日本は、就労人口に対して4~5%、人口比ならさらに低くなります)。

本来、社会主義国であるはずの中国経済は、もはや共産主義経済とは言えません。共産党政府が「大衆が起業しすべてを新しく創る」ことを推奨していますから、驚きです。とは言え、もともと起業意欲の高い国民性が多いことも確かなのでしょう。起業意欲に高い国民性は世界を制覇します。かつてのヨーロッパや今も続くアメリカの野望とも相通ずるものがあります。このまま行くと、日本は、こうした野心に満ちた国々に経済も飲み込まれてしまいます。

 

■若者の起業意識も低い

同じくランドスタットが行った意識調査の中では若年層の起業意欲の引くさも見て取れます。

例えば、18~24歳を対象として、「多くの機会を得るために起業したい」と問いかけたところ、「はい」と答えた割合は28.3%でした。これはグローバル平均の63.8%を大きく下回る結果であり、リスクを取りたがらない国民性は若者にも浸透していると言えます。

  • 多くの機会を得るために起業したい

日本:28.3%

グローバル平均:63.8%

数年前のニューズなどの報道で、今の若者は海外に行きたがらない、ということが言われていました。海外留学をする学生や海外勤務を希望する新入社員が減っています。その理由の殆どは「そんなに無理して働かなくても、日本で不通に生活できればいい」、「海外より日本の方が安全で十分楽しい」などです。

言われたことは忠実にこなすことができるのに、支持されなければなかなか動かない、というぼやきが企業の現場から良く聞かれますが、起業では誰も支持してくれる人はいません。全て自分で考え、判断し、実際に行動し、全ての結果に責任を取らなければいけません。この数字を見る限りでは、そんなことをしてみたいと思う若者は少ないようです。

 

■日本は起業しづらい国?

また、ランドスタットでは、「政府は積極的にスタートアップ企業を支援している」と思うか、また、「起業するのに良い国」と思うか、と言う質問もしています。当然ながら、日本の回答は結果は正解平均と比較しても低い結果がでています。

  • 政府は積極的にスタートアップ企業を支援している(と思うか)

日本:約20%

グローバル平均:約50%

  • 起業するのに良い国(と思うか)

日本:約20%

グローバル平均:約57%

起業意欲が低いわけですから、この結果には納得できます。自分がやりたくないものややれないものに関しては、多くの人は、自分以外の何かにその理由を探します。しかし、これらの環境が整ったところで、おそらく起業率がそんなに伸びることはないと思われます。

 

■安定志向が高い国民

一番、興味深かったランドスタットの質問は、「スタートアップ企業で働きたい」と思うか、という問いかけです。本人が起業するわけではなく、そんな環境の企業や事業者に身を置きたいか、と言う問いですが、ここでの数字も起業意欲の低さとほぼ同じ結果になっています。

  • スタートアップ企業で働きたい

日本平均:23.5%

・18〜24歳:28.3% 

・25〜34歳:31.2%

・35〜44歳:26.4%

・45〜55歳:18.0%

・55〜65歳:17.0%

グローバル平均:53.0%

・18〜24歳:63.8%

どうも、起業したくないといういことだけではなく、起業という環境自体に対して距離を置いているようです。起業意欲の低さは、そのまま仕事に安定性を求めている、ということに通じています。グローバルではこうしたスタートアップの環境で働きたいと思う若者が多いのに比べ、日本では、18〜24歳で28.3%、25〜31歳でも31.2%、圧倒的に低い結果になっています。

海外、特にアメリカや中国では、有望なスタートアップも比較的多く誕生し、人々の話題をさらっていきますが、日本では、なかなかそうしたスタートアップ企業は生まれません。また、スタートアップは安定性がないばかりか、労働条件も悪くブラック企業とのイメージもあるようです。

 

■成熟した経済では起業意欲の低さは自由経済の崩壊を意味する?

バブル全盛期には「日本の土地が上がり続ける」と言いう神話がありました。大企業までもが、本業そっちのけで、こぞって土地を買いあさりました。銀行も海岸のがけっぷちのような建物が立たないどころか、人が降りることもできない場所を担保に数千、数億のお金を融資していた時代です。銀行も誰も、実際の土地なんて見ていません。見ていたらお金を貸すわけがありません。しかし、当時は土地さえ持っていればそれでよかった時代です。

しかし、そんな土地神話はいとも簡単に崩れ去りました。バブルの崩壊です。

おそらく日本人の多くは、サラリーマンは安定した職と思っているに違いありません。しかし、ひょっとしたら、それ自体が「神話」かもしれません。

情報も経済もますますグローバル化が進み、もはやそこには垣根すらありません。世界では、新しいチャンスを求め、成功に飢えた、起業意欲旺盛な若者(また若者以外でも)が、あらたなアイデアで果敢にリスクに立ちむかっています。安定した経済国であるにも関わらず、起業意欲が高い国の経済は、まだまだ伸びしろがあり、世界を舞台にどんどん成長していきます。

逆に企業の雇用を求め、安定を求める国の経済は、グローバル経済の中では伸び悩み、成長どころか縮小する危険性も多く含んでいます。そうなるとサラリーマンは安定職業ではなくなります。

成熟した経済国家では、起業意欲こそが経済の発展を後押しします。今の日本の安定志向は、この先の日本の雇用、そして、私たちの生活にとってどういう結果を生み出すのでしょうか?



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